「みつこ、おまえ曼荼羅っていうのを知ってるか?」
「うん、知っているよ。このあいだ上野で展覧会まで見た」
「あれなあ、世界中にあるんだよ、似たものが」
「へえ、そうなんだ」
「俺なあ、ずっと石を彫ってきて、なんだか、曼荼羅っていうものがわかってきた気がするんだ。
石って自然のものだろ、だから、伝わってくるものがあったんだろうなあ」
父は真顔で言った。
「へ、、へえ。どういうふうに?」
私はちょっとだけ動揺してそうたずねた。
「宇宙は、平面じゃなくて、時間もないんだ。それで、何層にもなっているんだよ。
その何層にもっていうのが、からくり箱みたいに時間も何もかもひっくるめて全部つながっていて、
理屈じゃないし、絵にもできないんだ。ども部分も全ての部分に通じているわけだよ。
奥の深い空間が、ずっとずっと果てしなく重なっているんだ。
それで、それをなんとかして表そうとしたのが、あれなんじゃねえかな」
―よしもとばなな「アルゼンチンババア」より
最後のくだりは、ついつい、Men in Black2のエンディングを思い出します。
もちろん娯楽映画ですが、2の方が良かった映画でした。^^
以前うちの教室に、今は高校生になったYunaちゃんが通っていてくれたとき
彼女はこの本を、好きな本のひとつとしてあげていました。
私も、よしもとばななさんの本は結構読んでおりますが
この本は、まだ読んでいませんでした。
で、今回やっとこの本を読んで
表紙と題名とのイメージとの違いに「おお」と思い
内容を知り、また「おお」と思った。
曼荼羅が出てくるではないか!!
(あ、小説のストーリーは省略です)
はるか昔。
大学の時の授業では、児童心理学とか、美術教育学とか
そういった授業が必修科目でした。
その中で、藤江先生の授業はなかなか面白かった。
大学で136単位?くらいも取ったにしては
大学で習って今も覚えていることはほんのちょっと。
その、ほんのちょっとの印象深い授業の中で
私たちは、「曼荼羅モチーフ」というものについて習いました。
人間の子供が、まず最初に描くもの
それはもちろん、規則性を持たない線とか点とかなのですが
その時点で子供は、鉛筆などの感触を楽しんでいるだけで
できあがった線などの意味は、何も考えて描いてはいません。
しかし、次の段階がある。
次にもうちょっとだけ成長した幼児が描くものとは
いびつな丸や、ぐるぐる巻きの線
とにかく、丸のような形を描くとか。
それが、実は「曼荼羅モチーフ」と呼ばれているものなんです。
絵を描こうとする人間の子が、まず最初に描く意味のあるものが曼荼羅モチーフなんだと。
つまり、人間の根本に「曼荼羅」というものが、生まれつき組み込まれているんだとか。
そして、この曼荼羅モチーフは、いたるところにある。
よく子供が太陽の絵を線で描きますよね。
丸の四方八方に線が放射状に出ている絵です。
あれも、曼荼羅モチーフなんだそうです。
大学の授業も、居眠りしながら聞いてたりしてたので
うまくは説明できませんが
あれも、これも、曼荼羅なんだと言われれば、なるほど~とびっくりの世界でした。
そして、冒頭の書き抜き部分に上手く表されているように
曼荼羅とは、外の全ての世界への広がりと、内なるものへの求心と
外界と、自分という個の内面との相関図でもあり
古くから、人類が表してきた世界観や宗教観の凝縮でもある。
いやはや、本当に興味深かったです。
よしもとさんの本は、「死」を含む世界を、しんと静かに見つめた物語が多い。
この短い物語を読んで、いろいろな記憶がよみがえってきた自分でした。
私はでも、生活の上で、結構幸せな部分を持っている。
今でも「大学であのときは…覚えてる?」と
話し合える昔なじみが今でも何人もいるし、年に一度以上は、顔を合わすこともできる。
そういう関係、私の財産でもありますね。
ま、とりあえずはきれいなものをたくさん見て
おいしいものを、たくさん食べて
好きな人たちと、良い時間を過ごしたいと思う
わがまま且つ、基本的な欲求。
トシだかんねー、いつまで生きとるか、わかりゃーせんもんね。
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